こちら診療室
矯正治療はここ最近かなり市民権を得てきたように思えますが、以前は誤解や偏見が多く、矯正医として患者さんとお話をする上で困ったことがたくさんありました。
ずいぶん前ですが、私が大学病院にいたころ矯正相談にいらした女の方で、まだ、20才位だったと思いますが、お店の店員さんで、最初から下を向き元気がない感じでした。口の中を見せてもらうと犬歯がいわゆる八重歯の状態になっていました。「これを治したいのですね」というとその患者さんはうなずきましたが、実は店長がその歯を抜いてこいと言ったらしいのです。人の歯を抜けというのは人の手や足を切断してこいというのと同じ位のことです。犬歯は抜かないで矯正をした方がよいと思いますよとお話してその日は帰られましたが、私が一つうれしかったのはその患者さんが歯を抜く口腔外科じゃなくて矯正科を選んで来院されたということでした。
今でもよくある話に矯正治療で歯を抜くことにまつわる話があります。
凸凹を治す場合や出っ歯を治す場合に歯を抜いて治療をすることがあるのですが、それを受け入れてもらえない場合があります。やはり虫歯にもなってない歯を抜くというのは抵抗があるのです。これは心情的にはよくわかる話なのですが、歯の数が多ければいいというものではなく、いかにしっかりした咬み合わせを作るかがそれ以降の歯の寿命に大きく影響するということを考えて欲しいのです。よくある例としておじいちゃんやおばあちゃんがかわいい孫の歯を抜くと聞いて猛反対するということがありますが、それではかえってお孫さんの歯の寿命を短くしているようなものです。
装置をつけたことに対する容貌が問題になることもあります。
ずいぶん前になりますが、スチュワーデスの患者さんが矯正装置をつけることに対して上司にお伺いをたてたところその航空会社は外国の会社だったのかOKがでたのですが、国内の航空会社では装置をつけるのはいけないというところもあると聞いています。
基本的に外国では歯並びの悪い状態をお客様に見せることを失礼と考え、国内では歯に装置をつけた状態をお客様に見せることが失礼と考えるようです。まだ歯に対する考え方が世界とは違うと考えさせられる一例です。
まだまだお話はつきませんが、わたしたち矯正医としては、もっと矯正治療が市民権を得られるようにしていきたいというのが共通の願いです。
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